フリースクール「ラヴニール」の日常と、その他イベントのお知らせ・ご報告。他にはフリースクールとは? 学校に行かないあいだに何があった? などの連載をしています。
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■ 何かがちがう ■
これはたぶん誰にも言ったことがないのですが、下校途中に自宅まで追いかけられたことがあります。自分が交差点で立ち止まり、一旦曲がるふりをして急に直進しだすと、追いかけてきた側も交差点を曲がったにもかかわらず急に向きを変えてこちらにやってきたので、たぶん間違いないと思います。幸い自宅がすぐ近くだったのであわてて駆け込み、鍵をかけました。
そのとき自宅にいた母は、何事かと尋ねてきて、
「今、変な人に追いかけられた」
とは言ったかと思います。
そのころから自宅付近では、顔が見えないように伏せがちに歩く人の姿が目につくようになりました。見知らぬ人に追いかけられた経験があるので、見ず知らずの人を怪しいと感じる警戒心はかなり強かったと思います。
その人が、毎週定期的にやってくる移動販売のパンを買っていました。自分もそのパン屋は利用していて、母といつも一緒に買っていました。
「ね? ほら、なんともないでしょ?」
その怪しい人を見て、何ともないから安心しなさい。と、続いたかもしれませんが、何の解決にもなっていないなと、もやもやする気持ちだけが残りました。
まず、先日後を追いかけられた人と、この明らかに様子が怪しい人とは、容姿がまったくちがいます。先日追いかけられた人は紺色の作業服。背はそんなに高くはないけど、速足で歩く人でした。この怪しい人は、いつも姿を見かけるたびに同じ服装。でも作業服ではない。背中を丸めているからかもしれませんが、背は低く、歩く速度は特に速くも遅くもないぐらい。
母には容姿がどんな感じだったかを何も言っていなかったので、母はまったくちがう人を見て、自分に安心しろと言ったのです。
これならわかりやすい「何かがちがう」ですが、もうひとつ、「こっちは本当に怖かったのに、怖かった気持ちをものすごく軽く扱われている」気がしたのです。怖い思いをさせた相手と対峙させて襲ってこないから大丈夫――、そんなわけありません。言葉にはしなくても、怖い思いをしたんだということに気づいてほしかったのです。
表の部分だけを解決して、内側の部分を見てくれない――。前に担任だったある先生が、こんなたとえをしていました。
「海の上に小さな氷の塊が見えて、それをただの小さな塊だと思って近づいたら、船の底が大きく傷ついて沈没した。海の上には小さくしか見えていなくても、中には大きい塊があるかもしれない。こういう状態を、氷山の一角、と言います」
氷山の一角とは少しちがうかもしれないけれど、自分はこの氷山の見えない部分も気づいてほしくて、まずは些細なことから母親に言うようになりました。クラスメイトが今日も忘れ物をしたこと、体育で跳び箱が飛べなかったこと――。
「○○さん、ドジなんだよ、きっと」
「それは仕方ないよ、お父さんとお母さんの子だもん」
母はいつも笑って返してきましたが、自分が求めていたのはこんな答えじゃなくて、その結果起こる担任からの罵倒が嫌だったのです。
誰かが忘れ物をすると、その責任は学級委員の自分に来るんだよ。
跳び箱が飛べないと、みんなの前で飛べない姿を晒さなきゃいけなくて、恥ずかしいんだよ。
母が笑って返すひとことで、本当はもっと話を聞いてほしいのに、この人に話したって何の解決にもならないな、と思うことが、どんどん増えていきました。些細なことでこのような感じなのですから、本当に話したいことなんて話せるわけがありません。
自分が学校に行きたくないという気持ちも、母には言い出せないままでした。
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プロフィール
HN:
フリースクール「ラヴニール」
年齢:
14
Webサイト:
性別:
非公開
誕生日:
2010/04/01
自己紹介:
2010年4月より大阪市にて活動をしているフリースクールです。日常の様子、思うことなどを更新しています。過去には、学校に行かなかった体験談、フリースクールって何なん? も、連載していました(カテゴリ分けしてあります)。
ブログ投稿者:
代表と、スタッフ1名で担当しています。
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